場所:倉敷市 債権者:大手系サービサー 中堅サービサー 市役所

建築板金業を個人営業している御主人からご相談があり、面談。家業は息子さんと若い人の3人で現場を切り盛りしていたが、リーマンショック以降、受注量が激減し住宅ローンの支払いにつまずいたようである。何はともあれ御主人の希望は、各債権者や裁判所から届く郵便物が来る度に、心臓が止まるような気がし、いつもビクビクして生活するのが嫌なのでどうにかして欲しいということ。
仲の良かった夫婦仲も最悪になっており、やはり自分のビクビクした気持ちが原因だろうということ。
「大丈夫ですよ。そんなに書面を見ることが嫌なら一週間以内に全く書面が届かないようにしましょう。」
御主人、奥様ともに疑いの目で私を見ながら、
「ほんまにそんなことができるん?」と主人。「ああ出来ますよ。」
しばらくの沈黙ののち
「お父さん、こうなったんも全部あんたの責任じゃ」と奥さん。
(女性は厳しいなぁと手に汗にぎる。)
「でもな、私らもう取られるものは何もない。この人に全て任せてみりゃいいわ。これ以上悪うなりようがないわ。」
(女性は強いなぁ、腹がすわっとる・・・)
「分かったわ、あんたに全て任せるわ。煮て食おうが焼いて食おうが好きにしてくれたらいいわ。後のことはお願いします。」
「御主人は焼いて食べた方が美味しそうですね。」
御夫婦が初めて笑う。
約束通り書面は届かなくなった。
その後、税金の滞納分がかなり多かったので債権者交渉で手を焼いたのだが、買主さんも見つかりスムーズな取引となった。
最初に御紹介した転居先の借家は大家さんの心が狭く、断られたが、次の借家の大家さんが心の広い方でこちらに決定。最初断られて焦ったが、誰がどう見ても次の借家の方が家賃も安く建物もきれいで、最初の大家さん断ってくれてありがとうということになった。
親子ほど違う年齢差の私と御夫婦ではあったが、私は奥さんの御主人に対するきつい言葉がすごく気になっていた。
「私が不幸になったのはあんたの責任」「こんなんなら死んだ方がまし」「この甲斐性なし」「このバカモノ」
男ならこんな言葉を毎日奥さんから聞かされたら精神的に参ってしまう。恐る恐る奥さんに幸福になりたいか聞いてみた。
「もうほんとに幸福になれるもんなら幸福になりたいわ。苦労ばかりじゃ。」吐き捨てるようにおっしゃる。
「奥さん、幸福になる方法があるんですけど聞きたいですか?」

「ばかばかしい、そんな方法があればすぐやるわ。」
「きれいな言葉を毎日使うとみるみるうちに幸福になれますよ。例えば、ついてる。嬉しい。楽しい。幸せ。感謝します。ありがとう。許します。とか豊かだなぁとかね。僕もできるだけ使うようにしています。僕もさる有名な大金持ちの人に教えてもらったんでやってるんですよ。」

「あんたそれで幸福なん?」
「ものすごく幸せですよ。毎日が幸せだから今日死んでも明日死んでも幸せに死ねますよ。ただ、今子供が小さいから死ぬわけにはいきませんけどね。」
「はあー、まあ確かに福顔じゃわな。」

「悪い言葉をずっと使っていると相手も自分も病気になります。どうせならだまされたと思って良い言葉を使いましょうよ。」
「ふーん、分かったわ。言ってもただじゃからやってみるわ。」
元々素直なご性格だったようです。
その後、御主人に奥さんどうですか?と尋ねると
「何か変わったで。わしを責めんようになったわ。」とのこと。
「でも仕事がねえからお金に困っとるんよ。弱ったぁ。」
早速、知り合いの建築屋さんをご紹介。
その後何も言ってこられないので確認のために電話すると
「あんたが良い言葉ばっかり使うようにすると仕事なんかそのうちいっぱい来ます言うたけど、ほんまその通りになったわ。びっくりしたわ。こんなん何年ぶり じゃろう。体がもたんぐらい忙しい。」
よかったよかった。よくなりました。
「もう駄目だ!」と思う時は大体底にいる時で、そこからゆっくりと運気が上がってくることが多いと思います。だから運気が最悪のときは「グッドタイミング。しばらく休もう。」ぐらいでいいのかもしれません。
この仕事をやっているとそんなふうに思います。